一般社団法人設立の完全ガイド|設立の流れ・メリット・手続き一覧など徹底解説!
【2024年版】一般社団法人の設立方法を詳しく解説します!
●一般社団法人の設立手順と必要書類がわかる!
●一般社団法人のメリットとデメリットがわかる!
●一般社団法人と他の法人格(株式会社、NPO法人など)との違いがわかる!
●一般社団法人設立後の運営と管理のポイントがわかる!
起業して法人を設立する場合、株式会社などの会社を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、法人格には株式会社以外にも様々な選択肢があります。
その中のひとつである「一般社団法人」は、設立しやすく自由度も高いため、意外と使える法人格です。
この記事では、創業手帳の創業者・大久保が自身の経験や創業コンサルティングを3,000件ほど行った経験をもとに、一般社団法人設立の特徴やメリット・デメリット、設立に必要な手続きなどを詳しく解説します。
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創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
一般社団法人とは?株式会社との違いから解説
まずは、一般的な法人格である株式会社との違いを見ていきましょう。株式会社と一般社団法人の大きな違いは、「営利を目的とするか?」です。営利を目的とする場合は株式会社を選択しますが、営利を目的としないなら一般社団法人を選んでもよいでしょう。
また、この「営利」とは「利益を出してはいけない」という意味ではありません。「事業利益を株主に配当してはいけない」という意味となっています。そのため、一般社団法人であっても有料でサービスを提供して利益を出しても構わず、その利益で社員へ給与や報酬を支払うことは可能です。
一般社団法人は営利を目的としない「非営利法人」で人の集まり(社団)をもつことができる法人格です。
法人には大きく分けて「営利法人」と「非営利法人」があり、株式会社をはじめとする会社や学校、宗教、組合などがそれぞれに分類されています。
一般社団法人の場合は非営利型で人を基盤とする法人のため、法人自体の財産はなく、法人設立時に資本金などは必要ありません。
しかし、実際に法人を運営していくためには資金が必要となります。一般社団法人の場合は「基金」といって、法人の活動資金や財産をもつことができます(もたなくてもよい)。
また、一般社団法人の略称は通常(一社)となります。銀行口座などではシヤ)または(シヤ、(シヤ)などと表記します。公益社団法人も同様です。
さらに一般社団法人について理解を深めたいときは、次の記事をご覧ください。設立方法、財団法人や一般企業との違いも説明しています。自分に一般社団法人が適しているのか判断するため、次の記事も役立ててみてください。
一般社団法人とは?財団法人や一般企業との違いや特徴を徹底解説!
旧制度と新制度で混在する社団法人
日本には以前から社団法人の制度があり、旧制度における社団法人は民法にもとづく許可制の公益法人とされていました。
しかし、2008年12月に施行された新たな公益法人制度にもとづいて、登記のみで設立できる「一般社団法人」と公益認定を受けた「公益社団法人」に整理されました。
従来から活動していた社団法人も「公益社団法人」と「一般社団法人」に分かれることになったのです。
つまり、現在の「一般社団法人」は、旧制度で公益法人として設立された一般社団法人と、公益性不問の新制度で設立された一般社団法人が混在している状態となっています。
これから一般社団法人を設立するみなさんは後者となりますが、このような現状があることを頭に留めておきましょう。
一般社団法人の構成機関
一般社団法人は、下記5つの機関から構成される法人です。
すべての機関を設置する必要はないため、それぞれの役割とともに設置義務についてもみていきましょう。
機関 | 役割 | 設置義務 |
---|---|---|
社員総会 | 役員の選任や解任など重要事項を決定する意思決定機関 社員で構成され、社員1名につき議決権を1つ有する |
必須 |
理事 | 役員 法人運営において職務執行権を有する |
必須 1人以上 |
理事会 | 理事全員で構成される機関 理事の職務執行の監督 業務執行の決定 代表理事の選任や解任を行う |
任意 |
監事 | 理事の職務執行を監査する 報告の催促や業務内容調査が可能 |
任意 理事会を置く場合は必須 |
会計監査人 | 貸借対照表や損益計算書など会計関係の監査を行う | 任意 貸借対照表の負債額が 200億円以上の場合は必須 |
機関によってそれぞれ行うことが異なり、社員総会と理事以外の機関の設置は任意とされています。
しかし、理事会を設置する場合には監事を、大規模な一般社団法人の場合には会計監査人をおくことが必須です。
一般社団法人の「基金」と「社員」の関係
株式会社では「資金を出した人=株主=議決権をもつ人」といった関係があります。しかし、一般社団法人にこのような仕組みはありません。
一般社団法人の「社員」と呼ばれる人は、会社の従業員とは少し違い、議決権をもつ「正会員」のような位置づけです。株式会社における株主に近い存在といえます。
しかし、一般社団法人の基金に拠出する(資金を出す)ことと一般社団法人の社員(会員)になることは別です。
一般社団法人において、基金をもつか否かは法人ごとに決めることができます。つまり、基金を拠出しなくても一般社団法人の社員になることができるのです。
もちろん、両方を兼ねることも可能ですが、基金を拠出していても定款に定めない限り、社員(会員)の議決権は原則平等となります。
一般社団法人の設立事例
ここで、一般社団法人には具体的にどのような設立事例があるのかご紹介しておきます。
【一般社団法人シングルマザー支援協会】
この協会は「お金を稼ぐ力を養う」「共感しあえるコミュニティ」「再婚という幸せ」の3つを柱として、シングルマザーが働きやすい社会を作るために活動している社団法人です。
シングルマザーに起業塾やプログラミング講座などを提供し、企業への派遣を行うなど、シングルマザーの雇用創出を担っています。
社会貢献活動を行っており、自治体と絡みやすいことから、一般社団法人との親和性がとても高いです。
地方創成として、シングルマザーが子育てのしやすい地方へ移住できるように支援する活動も行っています。
一般社団法人を設立する8つのメリット
つぎに、一般社団法人を設立するメリットをみていきましょう。
メリット |
---|
・法人名で契約や不動産登記などが可能になる ・他の法人に比べて設立が簡単で費用も少ない ・事業内容に制限がない ・行政等による監督が少ない ・公益性・信頼性の高いイメージを持たれる ・税制上の優遇がある ・小規模での運営が可能 ・社会的信用が獲得できる |
メリット1:法人名で契約や不動産登記などが可能になる
これは一般社団法人に限らず、法人格を取得するときの共通のメリットです。
行政機関等の委託事業や企業との契約でも、法人格であることが必須条件となっている場合があります。
とくに、オフィスを借りるときなどの不動産登記は任意団体名義ではできません。
メリット2:他の法人に比べ設立が簡単で費用も少ない
前述したように、一般社団法人の設立にあたって財産の拠出(資本金)は必要ありません。
登記に必要な費用も、株式会社と比べて少額で済みます。
お金がなくても事業をやりたい人が、一般社団法人を設立するケースは多いです。しかし、事業運営のためにはある程度の自己資金が必要となります。
自己資金などの準備はきちんとしておきましょう。
また、設立時に必要な社員数も2名以上となっており、少人数で設立することが可能です。
登記にかかる時間も、株式会社などと同様に2〜3週間でできるため、法人設立のハードルはそこまで高くないといえるでしょう。
メリット3:事業内容に制限がない
一般社団法人には、NPO法人のような事業分野の規制がありません。
営利を目的としないのであれば、収益事業も自由に行うことができます。
民間企業に近い事業も可能ということです。
メリット4:行政等による監督が少ない
確定申告など税金関係の手続きは必要ですが、NPO法人のように事業報告などの提出義務はありません。
メリット5:公益性・信頼性の高いイメージを持たれる
現在の一般社団法人制度は、制定されてからまだ10年程度です。
前述のとおり、旧制度の「社団法人」は公益法人の位置づけとなっています。
つまり、「社団法人」という法人格には知名度があり、とくに中年以上の世代には公益性のあるようなイメージをもつ人も少なくありません。
メリット6:税制上の優遇がある
一般社団法人は、「非営利型法人」と「非営利型法人に該当しない法人」の2種類があります。税制上優遇されるのは非営利型法人の場合のため、まずは非営利型法人として設立するといいでしょう。
非営利型法人に該当する一般社団法人は、税制上では「公益法人等」に分類されます。収益事業による所得に課税されますが、寄付金や会費などの非収益事業には課税されません。また、非営利型法人に該当しない一般社団法人は、税制上「普通法人」の扱いです。株式会社と同じようにすべての所得に対して課税されるため、税制上での優遇はありません。
メリット7:小規模での運営が可能
一般社団法人は、最低2人から設立が可能な法人で小規模での運営が可能です。
具体的には、社員2名以上かつ理事1名以上ですが、社員と理事は兼任できるため、最低2人から設立が可能になっています。
設立に人数がかからないことにくわえ、事業内容に制限がないため、小規模からビジネスを始めたいという場合にもおすすめの法人形態です。
最初は小規模からはじめ、規模の拡大が見込めるようになったタイミングで、少しずつ大きくしていくといいでしょう。
メリット8:社会的信用が獲得できる
一般社団法人は法人格のため、個人事業主などに比べ社会的な信用が獲得できます。
口座名義や契約の際にも法人名が利用できるため、取引先としても個人名より安心感が得られるでしょう。
たとえ行っている事業は同じだったとしても、外からの見え方は大きく異なりますので、この点は一般社団法人の大きなメリットです。
一般社団法人を設立する5つのデメリット
続いて、一般社団法人を設立する5つのデメリットをみていきましょう。
デメリット |
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・利益の分配ができない ・社員(会員)が増えると合意形成などが大変 ・法人税等の課税対象となる ・個人事業に比べ会計管理が煩雑 ・「上場企業」にはなれない |
デメリット1:利益の分配ができない
一般社団法人は、利益を株主や社員に分配することはできません。利益を分配できるのは株式会社の場合です。株式会社なら事業利益が余ったら分配できるため、社員には利益分配をモチベーションに日頃の業務を頑張ってもらうことができるでしょう。
ただし、一般社団法人は利益の分配ができない点に注意が必要です。利益の分配ができないと、社員はどれだけ頑張って業務をこなしても収入は変わりません。そのため、一般社団法人では社員のやる気に影響が出る恐れがあります。
一般社団法人の利益についてさらに理解を深めたいときは、次の記事でご確認ください。利益を得てはいけないわけではありませんが、分配はできません。また、一般社団法人は普通型と非営利型に分かれるため、それぞれの利益についても理解を深めておくといいでしょう。
一般社団法人が利益を得るのはNG?非営利法人の本当の意味とは
デメリット2:社員(会員)が増えると合意形成などが大変
一般社団法人は定款で定めた場合を除いて、社員が平等に議決権をもつことができます。
そのため、年1回は必ず社員総会を開く必要があります。人数が多いと、総会の招集・開催が大がかりになってしまうことも。
デメリット3:法人税等の課税対象となる
株式会社と同様に、法人税や法人住民税などは課税対象となります。
※ただし、非営利型法人の場合は収益事業のみ法人税課税対象です。
デメリット4:個人事業に比べ会計管理が煩雑
法人化するとなると、個人事業に比べて会計などの管理を適切に行わなければなりません。
とくに、非営利型一般社団法人の場合は注意が必要です。
収益事業(課税対象)とそれ以外を区分して会計処理を行ったり、補助金収入などが多い場合は消費税の例外的な処理が必要になるなど、通常の企業会計と異なる要素があります。
法人の会計は複雑であるため、会計ソフトを導入することによって効率化を図ることができます。
デメリット5:「上場企業」にはなれない
一般社団法人に株式はないので、どんなに成長しても株式上場という「エグジット」はありません。
また、社員総会の決議によって事業の譲渡は可能ですが、一般社団法人や一般財団法人以外の法人(株式会社やNPO法人など)と合併することはできません。
会社を大きくすることを目指すのであれば、営利法人の設立をおすすめします。
一般社団法人の設立要件・設立前に知っておくべきこと
一般社団法人の設立要件や事前に知っておくべきことをまとめて解説します。
<設立要件・知っておくべきこと>
- 人的要件
- 場所的要件
- 名称の制約
- 社員総会の開催義務
- 社会保険への加入
それぞれの内容をみていきましょう。
一般社団法人設立の人的要件
一般社団法人を設立する際には、最低2名以上の社員・1名以上の理事が必要です。
この人的要件を満たさない場合には、一般社団法人は設立できませんので注意しましょう。
社員は個人・法人どちらでもいいですが、理事は個人しか担当できない点にも注意が必要です。
しかし、社員と理事を兼ねることは可能なことにくわえ、社員には親族を指定しても問題ありません。
一般社団法人設立の場所的要件
一般社団法人を設立する際には「主たる事務所の所在地」を登記しなければなりません。
株式会社でいう「本店所在地」を登記しなければ、一般社団法人の設立ができませんので注意しましょう。
法人名称における制約
一般社団法人の名称の設定には、いくつかの制約が設けられています。
- 「一般社団法人」をどこかに必ず入れる
- 同一住所で同一名称は禁止
- ひらがな/カタカナ/漢字/数字/アルファベット/記号のみ
- 誤認される名称を使用してはいけない
同一住所で同一名称が禁止となっているため、住所が異なれば同じ名称でも登記自体は可能です。
しかし、法人の運営上問題がありますので、同一名称は避けることが望ましいでしょう。
また、一般社団法人の名称には下記の記号が利用できます。
「&」「’」「,」「–」「.」「・」
制約の中で、重複・不正のない名称を考えましょう。
社員総会の定期開催義務がある
一般社団法人では、事業年度に一回以上の社員総会を開催しなければなりません。
なお一般社団法人の社員総会では、事業年度における決算書の決議などが行われます。
また、定款の内容によっては、年2回以上の開催が必須になる場合があるので注意しましょう。
社会保険に加入しなければならない
一般社団法人は「法人」のため、社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する義務があります。
社会保険には理事と従業員が加入しなければならず、たとえ理事が1人という場合でも加入義務はなくなりません。
ただ、株式会社などと同様に無報酬の場合や、パート・アルバイトなどの加入要件に該当しない場合には、社会保険に加入する必要はありません。
一般社団法人設立の流れ
実際に一般社団法人を設立する際の流れは、下記の5ステップです。
- 2名以上の社員確保、1名以上の理事を選任する
- 定款作成
- 定款認証
- 登記書類作成
- 登記申請
それぞれのステップについて、詳しくご紹介していきます。
ステップ1:2名以上の社員確保、1名以上の理事を選任する
2名以上の社員を確保し、設立時の理事となる人1名以上を選任します。
なお、理事会設置一般社団法人を設立する場合は、理事3名以上が必要です。
監事設置一般社団法人、会計監査人設置一般社団法人を設立する場合は、それぞれ監事・会計監査人の選任が必要です(理事と監事、会計監査人を同一人物が兼ねることはできません)。
これらの設立時の理事・監事、会計監査人は定款に定める(指名する)こともできますし、定めなかった場合は後述の定款認証後に選任しなくてはなりません。
また、法人は社員になることはできますが、理事になることはできません。
ステップ2:定款作成
法律上、一般社団法人の定款に必要とされている項目は以下の7つです。
- 定款に必要とされている項目
-
- (1) 目的
- (2) 名称
- (3) 主たる事務所の所在地
- (4) 設立時社員の氏名又は名称及び住所
- (5) 社員の資格の得喪に関する規定
- (6) 公告方法
- (7) 事業年度
上記のほか、必要な事項を定款に定めることができます。ただし、法令で定款に定めることができないとされている事項もありますので、注意が必要です。
つぎの3つの項目は、定款で定めていたとしても無効になります。
- 無効になる項目
-
- (1) 社員に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を与えること
- (2) 法令で社員総会の決議が必要とされている事項を社員総会以外の機関が決定できるとすること
- (3) 社員総会で社員が議決権をまったく行使することができないと規定すること
定款は設立時に社員になる人全員が「共同で」作成し、全員の署名または記名押印が必要です。
また、定款テンプレートを配布しております。創業手帳で会員登録すると、管理画面で無料ダウンロードできます。以下に例を載せておきますので、ぜひご利用ください。
ステップ3:定款認証
定款の作成が完了したら、公証役場にて定款の認証を受けます。
定款認証とは、定款が正当な手続きによって作成されたことを証明するものです。
定款認証は、必ず主たる事務所所在地を管轄する法務局等に所属する公証人に依頼する必要があります。
定款認証には、公証人の手数料5万円がかかります。紙に印刷した定款の場合は、3通ほど用意しておきましょう。
電子定款の場合は、電子署名した定款のオンラインのやりとりが中心になります。
そのとき、電子署名のためのソフトウェアや法務省の「登記・供託オンライン申請システム」のID取得など、いくつかの準備が必要です。
ステップ4:登記書類作成
法人登記には認証を受けた定款に加えて、下記いくつかの書類を作成する必要があります。
理事会を設置しない場合に必要となる書類は6つです。
- 理事会を設置しない一般社団法人の場合
-
- (1)一般社団法人設立登記申請書
- (2)※登記すべき事項を記録したCD-R(オンラインで提出することもできます。)
- (3)設立時社員の決議書(設立時社員が設立時理事を選任した場合や事務所の所在地等を定めた場合)
- (4)設立時代表理事の互選に関する書面(互選した場合)
- (5)設立時理事及び設立時代表理事の就任承諾書
- (6)設立時理事の印鑑証明書
※「登記すべき事項」とは名称、主たる事務所、目的等、役員に関する事項などをテキスト形式のファイルに記録したものです。
理事会および監事を設置する一般社団法人の場合は、定款と上記(1)(2)(3)に加えて下記の書類を作成します。
- 理事会及び監事を設置する一般社団法人の場合
-
- (4)設立時理事及び設立時監事の就任承諾書
- (5)代表理事以外の設立時理事及び設立時監事の本人確認証明書(住民票記載事項証明書、運転免許証のコピー等に原本と相違ないと記載して署名または記名押印したもの、など)
- (6)設立時代表理事の選定に関する書面
- (7)設立時代表理事の就任承諾書
- (8)設立時代表理事の印鑑証明書
登記申請書に押印する代表者の印については、あらかじめ(または登記申請と同時に)「印鑑届書」を提出する必要があります。
また、代理人に申請を委任する場合は委任状も必要です。
ステップ5:登記申請
上記の定款などの必要書類を事務所所在地を管轄する法務局の法人登記窓口に提出します。
その際、登録免許税6万円を収入印紙などで納付します(オンラインで登記申請する場合も、印鑑届書など紙で提出が必要なものもあります)。
登記完了までには1〜2週間程度かかります。これで、一般社団法人の設立が完了です。
ちなみに、法人の設立日は法務局に申請書類を提出した日付となります。
ここまでの5ステップを終えて、一般社団法人設立は無事完了したことになります。
つぎは、設立後にやっておかなければならない手続きについてご紹介します。
一般社団法人設立後の手続き一覧
一般社団法人設立後には、税金や雇用、社会保険などの手続きを行わなければなりません。
手続きによっては、登記簿謄本や定款などの添付を求められますので、必要部数をまとめて用意しておくと便利です。
税金関係
- 税務署に提出する書類
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※カッコ内は提出期限です。
- 法人設立届出書(設立から2か月以内)
- 収益事業開始届出書(設立から2か月以内)
- 棚卸資産の評価方法の届出書(初年度年度末まで)
- 減価償却資産の償却方法の届出書(初年度年度末まで)
上記のほか、青色申告をする場合は青色申告の承認申請書などが必要です。
- 都道府県税事務所と市町村役所に提出する書類
-
- 法人設立届出書(提出期限は自治体により異なります)
なお、非営利型一般社団法人で収益事業を行わない場合、税務署の届出は必要ありません。ただし、都道府県事務所と市町村役所への届出は必要です。
また、税金については法人設立直後の手続きだけでなく、決算期などにも納付の手続きなどが必要です。
冊子版の創業手帳では、創業期の税金イベントをカレンダーにしてまとめています。先の税金イベントについて頭に入れて事前に準備することで、慌てて納付するといった事態にならずに済むでしょう。
雇用関係
- 公共職業安定所に提出する書類
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- 雇用保険適用事業所設置届(雇用してから10日以内)
- 雇用保険被保険者資格取得届(雇用した月の翌月10日まで)
- 労働基準監督署
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- 保険関係成立届(雇用してから10日以内)
- 概算保険料申告書(雇用してから50日以内)
- 適用事業報告書
- 就業規則(常時10人以上を雇用する場合)
- 税務署に提出する書類
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- 給与支払事務所等の開設届出書(設立から1か月以内)
そのほか、源泉所得税の納期の特例を申請する場合はその承認申請書などが必要です。
社会保険関係
- 年金事務所に提出する書類
-
- 新規適用届(雇用してから5日以内)
- 被保険者資格取得届(雇用してから5日以内)
- 健康保険被扶養者届(雇用した従業員に扶養される配偶者、子などがいる場合)
理事の重任・変更手続き
一般社団法人の理事には2年の任期があり、満了した場合には自動で退任となります。
そのため、理事を引き続き継続する場合の「重任」手続きまたは、変更手続きが必要です。
理事の選任には社員総会での意思決定が必要なため、2年ごとに理事の任命についても社員総会で議決を行いましょう。
ほかの非営利法人と一般社団法人の違い
一般社団法人以外にも、非営利法人には様々な形態があります。
一般社団法人とそれぞれの非営利法人の違いを知っておきましょう。
一般財団法人との違い
一般社団法人と一般財団法人は、どちらも「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」にもとづく法人という点で共通しています。
両者で異なる点は、前述のように「人の集まり」である一般社団法人に対して、一般財団法人は「財産の集まり」をもつことができる法人格ということです。
つまり、一般社団法人は資金がなくても設立できますが、一般財団法人の設立には300万円以上の拠出が必要となります。
また、一般社団法人には社員が必要ですが、一般財団法人に社員はおらず、代わりに役員(理事)や評議員(役員の選任などを行う)などが必要です。
NPO法人との違い
非営利企業の代表格となるNPO法人(特定非営利活動法人)。
一般社団法人とNPO法人は「人の集まり」という点で共通していますが、おもに5つの違いがあります。
法律の違い
NPO法人は「特定非営利活動促進法」にもとづく法人で、一般社団法人とは根拠となる法律が異なります。
活動内容の自由度の違い
NPO法人には20分野の特定非営利活動が法律で定められているのに対して、一般社団法人の事業内容については定めがありません。
一般社団法人の方が、NPO法人よりも活動の自由度は高いといえます。
設立要件の違い
一般社団法人とNPO法人は、設立に必要な社員数にも違いがあります。
一般社団法人が2人以上であるのに対して、NPO法人は10人以上の社員が必要となります。
年次報告義務の有無
NPO法人は、年度ごとに事業報告書や活動計算書などを所轄庁(都道府県・市町村など)に提出しなければなりませんが、一般社団法人にはそうした規定はありません。
資金繰り面・税制優遇など
NPO法人は、一般社団法人に比べて社会性や公益性が高いことから、多くの公的な優遇措置が受けられます。
NPO法人向けの助成金があったり、認定NPO法人は寄付した人が所得税の寄付金控除を受けられる(認定を得なくても自治体独自の住民税寄付金控除制度の対象になる場合もある)など、寄付金に対する優遇制度も充実しています。
公益社団法人との違い
公益社団法人とは、一般社団法人のうち旧制度である「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」にもとづいて公益認定を受けた法人です。
公益社団法人は、公益目的事業の所得に法人税等が課税されないなどの税制優遇措置があります。
また、公益社団法人に寄付をした人は、所得税の寄付金控除または税額控除を受けることができます。
しかし、公益法人としての剰余金や残余財産の分配について厳しく制約されているほか、特定の社員や役員、親族、営利企業などに特別な利益を与えてはならないことが定められています。年度ごとに事業計画書、事業報告書などを監督官庁に提出する必要があり、公益法人として透明性の確保が求められるといったデメリットもあります。
法人の種類で迷うなら、次の記事も参考にしてください。法人の基本的な意味から、営利法人と非営利法人の種類を複数まとめてあります。また、設立期間の違いや資金調達に向く法人の種類も紹介していますので、確認しておくといいでしょう。
法人の種類・特徴まとめ|本当に株式会社でいい?設立する前に知っておくべき法人の種類
「協会ビジネス」を行うなら一般社団法人
近年注目されている「協会ビジネス」は、協会を設立して会員を集め、理念や知識、ノウハウなどの普及を通じて社会に貢献しつつ、収益を確保しようとするビジネスモデルです。
一般に「協会」というと業界団体や職能団体(特定の企業・事業者などの利害から離れて、業界・関係者全体の利益のために組織したもの)、地域団体(観光協会等)など、様々なものがあります。
「協会」は、法律的に定義された言葉ではなく、誰でも名乗ることができます。昔から団体の名称として使われてきて、耳になじみやすい言葉でもあります。
2008年の公益法人制度改定をきっかけに急増し、資格講座やカルチャースクール、検定試験を行うもの、同業種の個人や事業主などを集める業界団体的なもの、同好会的なものなど、様々な形態のものがあります。
株式会社などでも会員組織を作ることは可能ですが、より人のつながりやネットワークに注目するのが「協会ビジネス」の特徴といえます。
また、辞書で「協会」と引いてみると「ある目的のために集まった会員が協力して組織し、維持していく団体」(三省堂 大辞林第三版)と出てきます。
これは、人の集まりである「社団」の類語と言ってもよいくらい親和性の高い言葉です。
協会ビジネスで起業する方が法人化を考えるなら「一般社団法人」は最良の選択肢といえます。
協会を設立するメリット・デメリット
個人でも理念や知識、ノウハウを伝えることは可能ですが、なぜ「協会」を設立するのか。
協会を設立するメリット・デメリットについて、詳しくご紹介します。
メリットは「知識や考えなどが形になる」ことや「ブランド力がつく」ことです。
理念や知識、ノウハウなどは、名前もない無形のもの。それを「〇〇協会」という形にすることで、目に見えるものとなり、第三者に伝わりやすくなります。
また、たとえばAさん個人のノウハウは「Aさんの〇〇についてのノウハウ」でしかありません。しかし、〇〇協会となれば一個人を離れて社会的な存在となり「〇〇協会は〇〇についての専門家」としての地位に立つことができます。
Aさん自身も「〇〇協会 代表理事」などの肩書をもつことができるため、協会の組織に仲間が集まれば、ネットワークが広がる拠点となります。
一方で、協会という組織を作ることによるデメリットもあります。
協会を設立することによって、個人だけのものではなくなります。人の結びつきを基礎とする組織にとって、設立者自身の私利私欲、利益追求が前面に出すぎるのはマイナスです。
また、十分な利益を確保できず廃業などに追い込まれると、協会が資格や認定証などを発行している場合は根拠が失われてただの紙切れとなってしまいます。
このほかにも、協会の会員が不祥事を起こした場合、会員個人にとどまらず協会自体のブランドイメージを毀損する危険性があります。
任意団体でも一般社団法人でも、「協会」を作って活動するのであれば、組織運営に注力する必要があるのです。
一般社団法人の設立に関するQ&A
最後に一般社団法人設立について、よく寄せられる質問と回答をご紹介します。
Q.一般社団法人は2名以上でなければ設立できない?
はい、一般社団法人設立には最低2名の社員が必要です。
一般社団法人では、一個人だけでなく、法人が社員(会員)になることもできます。
すでに株式会社などの法人を経営している方が、新たに一般社団法人を設立する際には、法人を社員とすることによって、実質1人で一般社団法人を設立することも可能です。
ただし、定款認証の際に、既存法人の事業目的と一般社団法人の社員となることの整合性を問われる可能性があります。きちんと説明できるようにしておきましょう。
法人登記には費用もかかりますし、法人住民税のように、登記をしておくだけでかかる税金もあります。
事務的な手間もあるので、ビジネスモデル上の必要性など、なんらかの事情がある場合は別ですが、誰か1人に声をかけて設立時の社員になってもらうか、1人で設立できる法人格を選ぶほうがよいでしょう。
また、設立後に社員1名が退社して、残った社員が1名のみになってしまっても登記が取り消されたりすることはありません。結果的に、社員1名のみの一般社団法人が存在することもあります。
Q.一般社団法人の設立費用は?
前述のように、人の集まりである一般社団法人は、財産の拠出は必要ありません。株式会社等の設立と異なり、資本金、出資金などの用意は不要です。
設立手続きにかかわる費用としては、下記の計11万円が必要です。
- 定款認証費用:5万円(公証人の定款認証を受けるための手数料)
- 登録免許税:6万円(なお、事務所が複数ある場合は1カ所につき6万円です)
ただし、税法がとても複雑なので、一般社団法人設立に強い税理士が必要不可欠です。こういった専門家に頼るようにしましょう。
Q.一般社団法人の設立にかかる期間は?
一般社団法人の登記手続きは、一般的な営利企業の設立登記とほぼ同様です。書類などが整えば、最短2〜3週間程度で設立できます。
Q.一般社団法人の「営利型」と「非営利型」の違いは?
冒頭でも少し説明しましたが、一般社団法人には「営利型」と「非営利型」があります。
非営利型一般社団法人には、法人税法上の収益事業のみが法人税の課税対象とされるなど、一定の税制優遇が用意されています(非営利型法人に該当しない場合はすべての所得が法人税等の課税対象となります)。
物品販売業、請負業、出版業、技芸教授業などの34業種のことを指す)
下記の(1)または(2)のどちらかの要件を満たしていれば、非営利型法人になります。
(1)非営利性が徹底された法人で下記の1から4のすべてを満たすこと
1 剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること。
2 解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること。
3 上記1及び2の定款の定めに違反する行為(上記1、2及び下記4の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含みます。)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと。
4 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること。
(2)共益的活動を目的とする法人で下記の1から7のすべてを満たすこと
1 会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること。
2 定款等に会費の定めがあること。
3 主たる事業として収益事業を行っていないこと。
4 定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと。
5 解散したときにその残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定款に定めていないこと。
6 上記1から5まで及び下記7の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと。
7 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること。
(国税庁パンフレットより)
非営利型法人になるためには、定款作成を慎重に行わなければなりません。不明点があるときには、専門家に相談することをおすすめします。
どちらの要件も満たしていないようであれば、営利型の一般社団法人となります。
また、設立後に非営利型法人になった場合や、収益事業を行っている非営利型法人が上記の要件から外れて営利型法人となった場合は、税務署に「異動届出書」を提出する必要があります。
一般社団法人が利益を得るのはNG?非営利法人の本当の意味とは
Q.一般社団法人の収入源は?
一般社団法人の収入源は、株式会社と同様に事業による収入です。何らかのサービスを有料で提供して、その利益を収入源とすることができます。一般社団法人であっても、様々な事業を行うことが可能です。
また、一般社団法人ならではの収入源もあります。寄付金をもらう、会員サービスを提供して会費や入会金をもらう収入源です。ほかにも講演会や研修を行い、その参加費用を収入源とすることもできます。
Q.一般社団法人の「理事会」ってなに?
一般社団法人には、理事会という組織があります。
本来、一般社団法人は、年に一度社員総会を開かなければなりません。しかし、社員が多くなると総会を開くのも大変になりますよね。
理事会を設置しておくことで、社員総会の代わりに業務の意思決定ができるようになります。
一般社団法人の理事会には、3名以上の理事と1名以上の監事が必要です。
ただし、理事会は必ず置かなければいけないものではないので、仮に3名以上理事がいたとしても、設置していないところもあります。
理事会設置の有無は、登記の段階で決めておく必要があります。一度理事会を置いてしまうと、変更するときにもお金がかかりますし、理事と監事の人数も常に確保しておかなければなりません。
社員数が多くなる可能性があれば設置しておくのもよいと思いますが、後々変更するのも大変なので、最初の段階で慎重に検討しておきましょう。
まとめ
まずは、事業内容をしっかり固めることが大切です。
創業手帳のアプリ版では事業計画書作成ツールがございます。スキマ時間でスマホで事業計画を練ることができます。
また、冊子版の創業手帳でも、事業計画シートをご用意しています。直接書き込める形式で、資金調達の際にも活用できますので、ぜひご利用ください。
一般社団法人を設立するには、定款や登記書類を作成するために、あらかじめ決めなければならないことが多くあります。
間違いがあったり、後々変更しなければならなくなった場合などには追加で費用がかかってしまうので、設立するときはスケジュールに余裕をもって、慎重に進めていってください。
また、定款や登記書類については専門家に相談することでミスが減るでしょう。
冊子版の創業手帳では、創業支援を行っている機関を紹介しています。手続きだけでなく、経営コンサルティングや、創業セミナー、ビジネス・マッチングなども行っているので、創業期に非常に役立ちます。
他にも創業カレンダーもお配りしています。会社設立を起点に前後で何をするべきなのかスケジュールが一目瞭然になるものです。スケジュールに余裕を持ち、手続きに漏れがないようにこちらで追っていくことをおすすめします。
ぜひ活用してみてくださいね!
(執筆:創業手帳編集部)
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